木下理子 著. 高野ユリカ 写真. 明津設計 デザイン. oar press, 2025. Hardcover with obi. Text in Japanese and English. 140pp. Size: 148x89mm.
森山さんのおうちは、可愛くて明るくて、健康的なのに、どこか儚くてどうしようもなく切ない気持ちにさせられる。
(本書への寄稿より/木下理子「揺れる星の上で」)
美術作家・木下理子による2024年2月に9日間のみ開催された展覧会「幽かなスリル」を収録する記録集。撮影は写真家の高野ユリカ。
木下理子は、身近な素材を扱いながら環境にあわせて作品を制作・配置し、それらをある時間や空間の中に展開させることで、その物理的な状況や現象の変化をも包摂しながら、作家が、或いは鑑賞者が世界を知覚する装置として作品を発表してきました。
建築家・西沢立衛の代表作の一つとして知られる東京・大田区の「森山邸」。この場所を作家は訪れ、そしてその場所で生活を営む森山さんとの交流から展覧会「幽かなスリル」は実現しました。
人の気配を感じながらもひっそりとした隠れ家のように住まうこともできる住宅の中で、限りなく多くの時間を過ごす森山さんの暮らし。
大量のレコードや蔵書に囲まれ、詩や芸術を愛でつつ、小さな古道具やエフェメラ、オブジェを誰に見せるわけでもなく配置換えしながら、この世界ではないところに隣接しているかのような美しい浮遊感のある空間で蓄えられてきた時間たち。
『幽かなスリル』は展示の記録集であると同時に、そのような作家が触発された森山邸の気配、その日を永遠に留めて繰り返し顕れるように、密やかな時間をその中に隠しています。
(出版社ウェブサイトより引用)
写真図版のほか、詩人・田野倉康一、木下理子による書き下ろしテキストを収録。袖珍本と呼ばれるポケットサイズの小さな判型です。
*新刊です。